ネギのお守り役、神楽坂明日菜よ
無事三年に進級できたのもつかの間
噂の桜通りの吸血鬼に遭遇したんだけど、それがうちのクラスの二人だったなんて・・・・
しかも本当の狙いはネギみたいだし
思えばネギがウチのクラスに着てから騒動ばっか起こるわね
昨日は昨日でネギのペットとかいうエロオコジョが本屋ちゃんを巻き込もうとしたし・・・・
ケーキ楽しみにしてたんだけどな〜
ま、あいつもおっちょこちょいだから放っておけないんだけどね
さて、ネギでも慰めに行きますか
ピエロが踊るは麻帆良の地 第11話「ピエロ、仲裁する」
翌朝、一度寮に戻ってから登校するハルナたちと別れ、睡眠不足をものともせずに通学ラッシュならぬ通学ダッシュを終えた横島たちは辺りをキョロキョロするネギとアスナたちと合流した。
「おはようネギ、アスナちゃん、このかちゃん。」
「あ、おはようございます横島さん。メドーサさん。」
「おはよ。」
「おはよ〜横島さんにメドちゃん、タマモちゃん。横島さん、昨日大丈夫やったの?」
「あ、そういえば昨日ケーキ食べに行ったんですよね?どうでしたか?」
「・・・・ネギ、口では語れないよ。真実とは自分で見るものさ、だから今度行ってこい。雪広が誘いたがってたぞ。」
やけにかっこいい台詞を吐く横島だが顔は青ざめ、冷や汗をだらだら流していて台無しにしている。
は、はぁ、と曖昧に頷くネギを横目に横島はネギの肩に乗るカモが目に入った。
じーっと見ていた横島だが急にネギの肩を叩く。
「昨日も思ったが、ペットにネズミはどうかと思うぞ?」
「ネ、ネズミじゃないよ横島さん。おこじょのカモ君っていうんだ。それにペットじゃなくて友達だよ。」
「ふ〜ん。ま、俺もタマモをつれてるから別に問題ない「問題ありよ、横島さん!!」ア、アスナちゃん?」
納得しそうな横島にアスナが詰め寄る。
その表情はやけに真剣であった。
「このエロオコジョ、私やこのかの下着を盗んでそれに埋もれるように寝てたのよ!?」
「な、何だってぇぇぇーーー!?!?お、おこじょの分際でなんて羨まし、じゃなかった許されないことを!!俺がやりた、ゲフッゲフッ。俺ですら考えだけで留めていたのに!!!行けタマモ!!今こそクラスのマスコットキャラの地位を死守するときだ!!」
言い直しているが本音をしっかりと口にしているのがなんとも横島らしい。
もちろんそれを見逃せるわけもなくタマモは齧り付いた。
「うぅーーーガブッ!!(何ふざけた事言ってるのよ!!)」
「ギャーー!?タ、タマモ落ち着け!!い、痛い頭を噛むな!!噛む相手はあのおこじょじゃーー!!」
朝の喧騒の中でまわりから浮くほど騒がしい横島たち。
そのもとに3−Aロリっ娘三人衆の一人とその従者が近寄ってきた。
「ふん、朝からにぎやかな連中だな。」
「エ、エヴァンジェリンさん、茶々丸さん!?」
「おはようネギ先生。今日もサボらせてもらうよ。フフ、ネギ先生になってからいろいろ楽になった―――おっと、勝ち目はあるのか?校内ではおとなしくしておいた方がお互いのためだと思うがな。」
堂々とサボるといわれ反射的に杖に手を掛けたネギだがエヴァに言われ行き場のない悔しさがつのる。
成り行きを見守っていた横島だがネギの圧倒的不利に小さくため息を吐き立ち上がった。
「つまり、今日もエヴァちゃんはサボ○ンダーをするわけだな。」
「サボ○ンダーってゲームに出てくる敵キャラでしょ?普通サボタージュじゃないの?」
「いや、この場合は合ってるんだよアスナちゃん。あいつって強い技を持ってるのに戦闘が始まればセコいぐらい早く逃げるだろ?」
「・・・・ほう?つまり私が逃げていると、そう言いたいのか?」
「別にそんなつもりはないぞ?ただ俺は思ったことを言っただけさ。」
怒りに体を震わせるエヴァに驚いた表情で聞き返す。
その後ろではメドが呆れてため息を吐いている。
ネギとアスナは展開に着いていけずぽかんとしている。
「い、今この場で八つ裂きにしてやろうか?」
「校内ではおとなしくしておいた方がお互いのためだと思うがな―――誰の言葉だったかな?んでどうするんだ?」
「誰が逃げるか!!」
「じゃあ授業に出るんだな?」
「グッ!?」
横島に似合わない意地の悪い笑みを浮かべる。
安い挑発に乗ってしまったエヴァは言い返すことも出来ず踵を返した。
「し、仕方ない今回だけは出てやる。だが次はないと思え!!いくぞ茶々丸!!」
「はい、マスター。それではお先に失礼します。」
苛立ちを隠さないまま茶々丸を引きつれさっさと教室に行ってしまった。
それを見送った横島はぽつりと呟いた。
「嫌われちゃったかな?」
「何言ってるんだい。もともと好かれてなんかいないだろ。」
「コンッ」
「す、すごいです横島さん!!エヴァンジェリンさんを授業に出席させるなんて!!」
「ははは、そんな大層なことじゃないよ。―――さぁ俺らも教室にいこう。あれだけ言っといて遅刻したら何言われるかわかったもんじゃない。」
そう言うと全員で教室に向かう。
ただ一人メドーサだけは自ら嫌われ役を駆って出た横島を見ながら、もう一度小さくため息をついてゆっくりとした足取りで後に続いた。
ちなみにエヴァは一日中横島に向かって敵意むき出しの殺気を送っていて周りの生徒が怯えるように授業を受けていたのははなはな余談である。
「さぁ待ちに待った放課後の時間がやってまいりました。現在我々は茶々丸さんのあとを着けているネギたちを着け、現在桜が咲き誇る河川敷に来ています。」
「誰に言ってんのよ師匠?」
「イヤただ何となく言ってみただけだ。それにしてもアスナちゃんとネギは仮契約を交わしたみたいだな。」
「いや、急に話を変えないでよ。」
「大方、あの白いのに唆されたんだろうさ。でなきゃあの小僧が一般人と仮契約するなんてありえないからね。」
「だからメドちゃんも普通に返さない。」
「ムダよハルナ、あなただってここ数週間でヨコシマの言動が普通じゃないのはわかってるんでしょ?無視すればいいのよ無視。」
頭の上でため息を吐くタマモ。
一方茶々丸は木に引っ掛かった風船をとり、お年寄りを助け、川を流れていた子猫を助け、猫の溜り場で餌をやるなど進んで行った。
「うぅ〜えぇ娘やなぁ〜。」
「ち、茶々丸さんってあんなにいい人なんだ。とてもエヴァちゃんの従者に見えないんだけど。」
「そりゃ偏見ってやつだね。エヴァンジェリンの従者だからって言動まで一緒とは限らないだろう。ってよりもそれぐらいで泣くことかい?」
「何言ってるんだ!電車に乗ってもお年寄りに席を譲らない腐った人で溢れかえる現代であんなに人に尽くせるのは士郎ぐらいなもんだぞ!」
「いや、シロウは特別でしょ?あの人を基準にしたら現代人全員が腐っちゃうでわよ。―――それより、ネギたちが動くわよ。」
士郎って誰よ、と疑問に思うハルナをよそに横島たちはネギたちに視線を送る。
契約執行で身体能力を上げたアスナが茶々丸とデコピンで対等に渡り合っていた。
「どちらか危なくなったら助けに入る「まちな。」どうしたメド?」
「早乙女にやらせたらどうだい?」
「えっ私?」
「この私と横島が直々に教えてやってるんだからあれぐらい割って入ることぐらい出来るだろ。」
「う〜ん・・・・俺はともかくメドが教えてるんだから、大丈夫かな?やってみる気はあるか?」
「・・・・うん、頑張ってみる。」
横島は少し不安そうだったが、ハルナがやってみたいというなら止める気はなかった。
そのハルナも突然の案に驚くが、今の自分がどこまでやれるのかを知りたかったこともあり緊張しながらもしっかりと頷く。
霊力による肉体強化と浄眼を発動させてネギたちの一挙一動を見逃すまいと真剣になる。
するとネギが光の矢を放たれるが、茶々丸は避けようとせずに固まっている。
「や、やばいっ!!」
ハルナは矢のごとく茶々丸の前に飛び出した。
そして霊力を集中し、サイキックソーサーを展開して手を矢の軌道に合わせ振るう。
「えっ!?」
しかし、ネギが突如割って入った人影に気付きギリギリに来て矢の軌道を変えてしまったた。
最後の最後で気を抜いたハルナはそれに合わせることが出来ず、光の矢はハルナを包むように爆発した。
「ち、ちょっとネギ今誰かいなかった!?」
「あぁ〜どうしようアスナさん!!関係ない人を攻撃しちゃったかも!!」
「どうするってどうしようもないでしょ?もう当たっちゃったのよ?ってかなんか茶々丸さんを助けようとした感じだし敵だったんじゃないの?」
パニックを起こす二人は徐々に晴れはじめた煙の中で動く人影を見つけた。
「痛〜〜い!!ネギ先生やるならやるでしっかりやってよ〜。」
「「ハ、ハルナ(さん)!?」」
「「・・・・いい人だ。」」
「ちょっ、ちょっと待ってください二人とも!!ネギの兄貴は命を狙われたんでしょ、しっかりしてくださいよう!!とにかく人目がない今がチャンスっす。心を鬼にして一丁ボカーっとお願いします!」
当初の目的を忘れて涙を流す二人にカモが慌てて言う。
それで我に返った二人だったがとても悪い人には見えない茶々丸を攻撃するのは抵抗があるらしく渋っていたが、カモの勢いに押される感じで茶々丸のもとへ向かった。
「・・・・こんにちは、ネギ先生、神楽坂さん。・・・・油断しました。しかし、横島さんはご一緒ではないのですか?」
突然のネギたちの登場にも驚いた表情一つ見せずむしろ意外そうな表情をする。
しかし、それもほんのわずかでネギたちが読み取れるほどではなかった。
「えっ、なんで横島さんがここで出てくるのよ!?」
「そ、そうですよ。横島さん一般人ですよ?ここにいないのは当たり前です。」
「・・・・そうですか。それではお相手します。」
不思議そうな表情をしている二人に何も言う事無くゼンマイを取り外す。
それが合図となりアスナは飛び出した。
「行きます!!
契約執行により肉体強化されたアスナは茶々丸に向かって物凄い速さで向かった。
「神楽坂明日菜さん、いいパートナーを見つけましたね。それに素人とは思えない動きです。」
繰り出されたデコピンを首を傾け躱すと足払いをして距離をとる。
体勢を立て直したアスナは追撃をかけた。
それに合わせるように繰り出されるこぶしを間一髪で躱すとお得意の飛び蹴りを腹に放ちよろめかせる。
その一瞬の隙をネギは見逃さなかった。
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル
「・・・・追尾型魔法至近弾多数・・・・回避不可能。すみません、マスター私がやられたあとの猫の餌を。」
放たれた魔法の射手を分析した茶々丸はそこにエヴァがいるかのように零す。
しかし、それが叶う事はなかった。
何者かが魔法の射手の射線状に割り込んできたのだ。
「えっ!?」
突然の乱入者に驚いたネギは反射的に矢の軌道を変える。
しかしそれも若干ずれるだけにとどまり魔法の射手は爆発してしまった。
「ち、ちょっとネギ今誰かいなかった!?」
「あぁ〜どうしようアスナさん!!関係ない人を攻撃しちゃったかも!!」
「どうするってどうしようもないでしょ?もう当たっちゃったのよ?ってかなんか茶々丸さんを助けようとした感じだし敵だったんじゃないの?」
パニックを起こす二人は徐々に晴れはじめた煙の中で動く人影を見つけた。
「痛〜〜い!!ネギ先生やるならやるでしっかりやってよ〜。」
「「ハ、ハルナ(さん)!?」」
ハルナは腕をぶつけたのか擦りながらハロー、と陽気にあいさつをした。
突然の乱入者にネギたちだけではなく茶々丸までも驚いている。
「最後の最後で気を抜くんじゃないと何回言ったら解るんだい早乙女。」
「いや〜アハハハ。」
「まあ、そういうなってメド。お疲れハルナちゃん。」
「よ、横島さんにメドーサさんまで!?ど、どうしてここに!?」
今度は横島とメドーサの登場にまたもやパニックに落ちかかる二人。
それに気付いた横島は優しく微笑みかけた。
「落ち着けネギにアスナちゃん。それに茶々丸さん、みんな怪我はないか?」
「はい。損傷箇所はありません。」
「私も特に・・・・じゃなくてこっちの質問に答えなさいよ!あ、あんたちもしかしてエヴァちゃんの手先なの!?」
「手先?冗談、何で私らがあんな小娘の下に着かなきゃなんないんだい。頼まれてもこっちから願い下げだね。」
「じ、じゃあどうして茶々丸さんを!?そ、それにハルナさんってこっち側の人だったんで、あだっ!?」
「落ち着けって横島が言ってるだろうが。」
メドーサは暴走するネギが気に障ったのかゲンコツをかます。
横島は頭を押さえ半泣きになっているのを苦笑いを浮かべて見る。
「止めたのはネギが自らの意志で茶々丸を攻撃したわけじゃないからだな。だからハルナちゃんに止めさせた。ハルナちゃんについてはあとでゆっくり話すとするよ。」
「な、僕は自分の意志で「本当か?あのおこじょに言われたからじゃないのか?」!?」
真剣な目で聞く横島に言葉をつまらせる。
そこにカモをくわえたタマモがやってきた。
それをネギのもとで放すと横島の元に戻ってくる。
「ご苦労様タマモ。」
「本当よ。あのネズミ、じたばた暴れてうるさいっちゃありゃしない。」
「ウルセー!オレっちはオコジョの妖精だー!」
「き、狐が喋った・・・・」
「あら、ネズミが喋るのは許せて狐が喋るのは許せないの?」
唖然とするアスナをからかうように喋る。
カモがネギの肩に乗るとタマモを指差し騒ぎ始めた。
「やい狐!オレっちを食おうとしやがっていったい何のマネだ!!」
「あんたなんて食べるわけないでしょ。私をなんだと思ってるのよ。私はただ横島に言われたから連れてきただけよ。―――それに、自分で主人をけしかけておいて安全な場所で見ているやつにどうこう言われるつもりはないわ。」
最後はカモを見下すような視線で睨む。
それに怯えたカモはネギの影に隠れた。
「それぐらいにしとけよタマモ・・・・ところでネギ。」
顔を俯かせていたネギはビクッと体を震わせゆっくりと顔を上げる。
そこにあったのは怒りに満ちた顔や見下すような視線でもなく優しい笑みだった。
「いいか、別に一対二が卑怯だとか言うつもりはない。むしろ戦いにおいては人数差なんて当たり前だ。ただなこれだけは忘れるな・・・・その人にとって大切な何かを傷つけるということは自分が恨まれる、ということを。」
「その人にとって大切な何かを傷つけるということは自分が恨まれる・・・・」
「そうだ、俺だったら世界中の美女を傷つけるやつは許せないし、メドやタマモ、ハルナちゃん、クラスのみんなが傷つけられたらそいつを絶対に許せない。ネギ、おまえにだってそういうものがあるだろ?隣に立つアスナちゃんだったり、いつも肌身放さず持っている杖だったりな。・・・・今二人は茶々丸を傷つけようとした。つまりエヴァに同じことをされても文句は言えないってことだ。その覚悟が君たちにはあるか?」
嘘を許さない真剣な瞳で二人を見る。
上辺だけで口にしているのではないことは二人も重々承知していた。
けれどもそれにすぐ答えれるほど決意を持って戦っていたわけではなかった二人は黙り込んでしまう。
考え込む二人を置いておき、今度は茶々丸に視線を向けた。
「・・・・さて、次は茶々丸さんの番だ。」
「・・・・なんでしょうか。」
「なぜ魔法の射手を避けようとしなかった?君ならば全弾とは言わなくてもかなりの数を躱せたはずだ。・・・・あそこでハルナちゃんが助けなかったら死ぬかもしれなかったんだぞ。」
「お言葉ですが横島さん。私はガイノロイドです。修理さえ出来れば何の問題もありません。」
「いいや違う、君は生きているんだ。修理できるからという理由で自らの命を捨てちゃいけない。」
「生きている・・・・理解不能です。生きているとは生物に対して使用する言語です。私はガイノロイドなので対象外です。」
茶々丸はただ淡々と話す。
それを聞いていた横島だったが淋しい表情をすると言い聞かせるように話し始めた。
「それも違うんだよ。生きているということは心を持っているってことなんだ。ネギ、君は九十九神って知ってるか?」
「い、いいえなんですかそれは?」
「九十九神ってのは長い間使われていた道具なんかに魂が宿った妖怪のことだ。俺にはその九十九神の知り合いがいてね、そいつは泣くし、笑うし、怒るし、他人の心配なんかもしていた。・・・・人となんも変わらなく心を持っていた。これは生きているといえるんじゃないか?」
「・・・・」
何を言ったらいいかわからないといった感じで、黙ったまま横島を見つめる。
横島はさらに続けた。
「さっき茶々丸さんは困っている子供やお年寄りを助けたよね。捨てられている猫に餌もあげていた。あれはプログラムされてたことなのか?」
「・・・・いいえ違います。」
「じゃあなぜ助けてあげたの?」
「・・・・自分でもなぜプログラミングされたこと以外のことをやっているのかわかりません。」
「それが心を持つということだよ。人に指示されるだけではなく自ら行動に出たってことは君が心を持ってる、つまり生きているということなんだ。」
「私が・・・・生きている。」
「そう、だからこれからはもっと自分の身を大切にしろよ。従者だからって自分を蔑ろにしたらエヴァちゃんだって悲しむぞ?あの娘は悪ぶってるだけで根はいい娘だからね。表には出さないけど心の中では悲しんでるはずだから。・・・・話はそれだけだよ。」
「・・・・わかりました。それでは失礼します。」
そう言うとバーニアを噴かし空高く飛んで行く。
それを見送った横島はゆっくりとネギたちに向き直った。
「さて、もう日が暮れ始めてるから詳しいことは明日でもかまわないかい?」
「えっあ、はいわかりました。」
「アスナちゃんたちもいいかい?」
「アニキがそれでいいって言うんならいいでっせ。」
「わたしも・・・・」
「わかった、そしたら明日俺の家で話そう。場所はハルナちゃんが知ってるからハルナちゃんに案内してもらって。頼むよハルナちゃん。」
OK、と返事をするとその日はその場で解散となった。
ゆっくりとした足取りで寮に帰っていくネギたちを遠くから見ていた茶々丸は無意識のうちに小さく呟いた。
「ネギ先生・・・・横島さん・・・・横島忠夫。」
それは誰に聞かれる事無く、風に流れていった。
翌日、ネギたちはハルナの案内で横島宅へとやってきた。
居間へと通され、メドーサの炒れたコーヒーを飲んでいたが、我慢できなくなったのかネギがうずうずと身体を動かしながら横島を見始める。
それに気付いた横島は小さく苦笑いを浮かべた。
「さて、何が聞きたい?答えれる範囲なら答えるよ。」
「はい・・・・いくつか聞きたいことがあるんですけど、横島さんはこちら側の人間だったんですか?」
「そうだ。まぁ、退魔師ってよりは傭兵だけどな。本当はもっと早く話すつもりだったんだけど、なかなか機会がなくてね。脅かせちまったのは謝るよ。」
「じゃあメドーサさんも傭兵をやってたんですか?」
「一緒に仕事をし始めたのは三年ぐらい前だな、でもその前から一緒に生活していたから何年一緒にいるかはわからんな。」
「し、小学生から戦ってたっていうの!?何でメドちゃんにそんな危ないことさせてるのよ!?」
事何げに話す横島にアスナが身を乗り出して声を荒げる。
それを落ち着かせようとする横島より先にメドーサが咎めるように言った。
「そう騒ぐんじゃないよ。この世界ならそれが普通なんだ。あんたらの世界の物差しで測ってもらっちゃ困るね。」
「でもっ!!」
「私が望んでしていることに口を出すのはやめてもらいたいね。正義感にかられて行動するのはかまわないけど、それでまわりを巻き込むのはやめな・・・・それはただのエゴなんだからね。」
声を上げて反論しようとするがメドーサは切り捨てるようにこの話を終わらせる。
自分の行動がエゴだと言われたアスナは悔しそうに顔を歪めた。
会話が途切れたところで静観していた横島がネギに聞く。
「・・・・他に何か聞きたいことは?」
「あ、はい。ハルナさんはもともとこちら側だったんですか?」
「あははは、それが違うのよねぇ。実は師匠の仕事中に乱入しちゃってさぁ〜、いや〜あの時はビビッたよ。なんせ本の中だけだと思ってた化け物が目の前にいるんだからね。・・・・まぁその時に私にもそっち方面のセンスがあることがわかっちゃってね。んで、成り行きでこっちの世界に足を踏みいれたってわけ。」
「何言ってるのよ。私たちはちゃんと確認をしたし、なによりハルナ自身があんなに喜んでたじゃない。」
タマモにため息を吐かれると、あははは、と頭をかきながら笑ってごまかす。
ネギはそれに小さく苦笑いを溢すがすぐに真剣な目に戻る。
そして遠慮がちにハルナに聞いた。
「あの・・・・ハルナさんは覚悟が出来てるんですか?」
「へっ?あぁ師匠が言ってた『その人にとって〜』ってやつ?・・・・ん〜どうだろう?最初は普通の人には使えない不思議な力が使えるって単純に喜んでたっけ。・・・・それに恨む恨まれるってなんかピンと来ないし。」
「じゃあ「でも・・・・」!?」
自分と同じ人を見つけて喜びの声を上げようとしたネギをハルナは遮るように続けた。
「でも、のどかや夕映が危ない目に遭うようだったら私は躊躇なんかしない。それだけは言えるよ。」
真剣な瞳で語るハルナにネギもアスナも言葉を無くした。
「ま、もっとも好奇心のほうが未だに上なのは否定しないけどね。」
アハハ、と笑うハルナだったがネギたちは先の言葉が印象強く、黙り込んでいた。
そんな中、カモが横島に聞いた。
「なぁ旦那、あのエヴァンジェリンって女の情報を教えてくれよ。あんたらがエヴァンジェリンの仲間じゃないっていうなら教えても問題ないんだろ?」
「・・・・旦那って俺のことか!?」
「他に誰がいるんすか。そんなことより早く教えてくださいよ。」
反論しようとするが自分の年齢を考えれば学園長より年上なことに気付いた横島は肩をがっくり落とし渋々話し始めた。
「ったく・・・・エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、15年前までビンゴブックを賑わせていた賞金首だよ。賞金は600万ドル、戦闘ランクはSで二つ名は
『
「ろ、600万ドル!?!?」
「ラ、ランクS!?!?」
「ちょ、ネギ何そんなに驚いてるのよ?そのランクSってそんなにすごいの?」
驚く二人に比べ、アスナ一人事態に着いていけてない。
ネギは手をバタバタさせてアスナに答えた。
「す、凄いってレベルじゃないですよ!!ランクSって言ったら12段階の上から二つ目ですよ!!」
「あんたはどうなのよ?結構いいランクなんじゃないの?」
「ぼ、僕は魔法学校を卒業したばかりですからまだランクDなんです。」
「はぁ!?ってことはまるっきり歯が立たないっていうの!?そんなの勝てるわけないじゃん!!」
「やべぇ〜よ兄貴、あそこでヤツを逃がしたのはマズイッス!!昨日まで奴ら油断してたけど、アニキにパートナーがいるってのを奴がチクったら絶対二人がかりで仕返しに来るって!!」
「何言ってるのよ?魔法は一般人には秘密なんでしょ?そんな大事にする分けないじゃない。」
「いい〜や、わかんないっすよ姐さん!さっき旦那が言ってたでしょ。あのエヴァンジェリンって女は冷酷で残虐な極悪人だって。そんなやつが周りを気にするような神経なワケないじゃないっすか!」
極悪人なんて言ってないんだが、とつぶやく横島を無視してカモはいまいち状況を理解していないアスナに説明をする。
その横でネギは思い詰めた表情でつぶやいた。
「で、でもカモ君。やっぱり茶々丸さんは僕の生徒だし、あそこでハルナさんが止めてくれてよかったんじゃないかな・・・・」
「甘い!!兄貴は命を狙われてんでしょう!?奴ァ生徒の前に敵ッスよ敵!!旦那たちもなんか言ってくださいよ!元はといえば旦那たちがあそこで止めなかったらこっちが有利になっていたのに!!」
カモは戸惑い始めたネギに叱咤すると、今度は横島たちを責め始める。
それにメドーサは呆れてため息を吐いた。
「ほぅ、あそこで止めないであの小娘の怒りを買った方がよかったって言うんだね?」
「うっ、それは・・・・」
「そうね、お礼を言われても責められる筋合いはないわね。」
二人の言うことも一理あるために、カモは何も言い返すことができなくなり話を進めることにした。
「と、とにかく奴らが今本気で来たらヤバいッス。なんとか対策を立てなきゃ!!数はこっちが勝ってるッスけど、このままじゃ寮内だけじゃなく学園内の他のカタギの衆まで迷惑がかかるかも・・・・」
「何言ってるんだい。私は何も手伝いはしないよ。」
横島たちを数に入れていたカモはメドーサの発言に驚き、アスナは怒りに顔を染めて反射的に詰め寄った。
「どうしてよ!?こんなにネギが困ってるのよ!!何で助けてあげようって思わないわけ!?」
しかし返ってきたのは冷たく突き刺さるような反応だった。
「・・・・自分の正義感を他人に押しつけるなと何回言ったらわかるんだい。助ける?はっ、何でこの私がそんなことをしなくちゃならないんだい。」
「ぐっ・・・・横島さんは?ハルナは!?まさかあんたたちまで見捨てる気じゃないわよね!?」
「わ、私は・・・・」
「俺は見捨てるつもりはないよ。・・・・ただ全面的に協力するつもりもない、これはネギの問題だ。ネギが解決しなくちゃ意味がない。」
アスナは望んだ反応が返ってこないことがわかると怒りを露わにして睨みつけ罵声を浴びせようとした・・・・しかし
「う、うわぁぁぁぁぁーーーーーん!!!!」
「あっちょっとネギ!?」
我慢の限界に達したネギは涙を流しながら杖を掴むとアスナの静止にも耳を傾けず、窓から飛び出した。
慌てて窓から身を乗り出すがすでにネギの姿は豆粒程度になっている。
「あら、逃げちゃったの?やっぱり子供ね。」
「誰が決めたかもわからないランクにビクついて逃げ出すなんて本当にガキだね。」
「何でそこで俺に視線を送るんですか二人さん?」
横島をからかうように見てくる二人に苦笑いを浮かべる。
二人はかつての横島は何十倍もの実力のある猛者と出会い、今のネギのように涙を流して逃げ回っていたことを思い出したのだ。
最終的にはなんだかんだ言って敵を倒してきた。
もちろんネギが同じような結果になるとは限らないのだが。
そんな三人をよそに、明日菜たちは飛び出したネギを追おうとしていた。
「姐さんヤバイッスよ!!早く追わなきゃ!!」
「わかってる!!でもその前に・・・・」
急かすカモを待たせ、メドーサに向き直る。
横島をからかっていたメドーサはそれに気付くとアスナにニヤリと卑しい笑みを向けた。
「早く追い掛けなくていいのかい?もたもたしてたらお子様先生がどんどん遠くに行っちゃうよ。」
「あ、あんたって人は!!あんな子供を泣かせといて何とも思わないの!?」
「私はガキは嫌いでね。泣かれようがどうされようが知ったこっちゃないね。」
「なっ!?あなたサイテーね!!それでも人間なの!?」
「あいにくと私は人間じゃないんでね。」
「あ、あんたいい加減にしてよね!!人をどれだけおちょくれば気が済むのよ!!」
「あ、姐さんタンマ!!今はそれどころじゃないっすよ!早くアニキを追わなきゃ!!」
「お、落ち着くんだアスナちゃん!!おいメド、言いすぎだぞ。」
事実を言ったメドーサだったが頭にきているアスナはからかわれたと勘違いして掴み掛かろうと手を伸ばす。
しかし寸でのところで横島とカモが止めに入った。
しかしメドーサは反省の色を見せる様子はない。
「ふん、私は事実を言ったまでだよ。」
「まだ言う気!!」
「メド「黙ってな。」・・・・」
「いいかい、全ての物事においてなにかしら優先順位ってものが存在する。あんたにとって小僧を助けることが優先順位が高いのかもしれないけど私はそんなもの優先順位にすら入ってないんだよ。」
「じ、じゃああんたの優先順位って一体何なのよっ!?」
「それこそあんたに話す義理はないね。」
メドーサの口ぶりに我慢が出来なくなった明日菜は怒りのままメドーサにつかみかかろうとした。
しかし、横島が割って入って仲裁する。
「いい加減にしろメドッ!・・・・すまないアスナちゃん、メドには俺から言っておくからネギを迎えに行ってくれないか?」
「横島さんまでネギを見捨てるっていうの!?」
「ちがうよ、ただ今ネギに必要なのは俺じゃない、アスナちゃんだ。」
真剣な瞳で語る横島に明日菜は何も言えなくなってしまった。
その後ろではカモの急かす声がする。
「あぁ〜もうわかったわよ!さぁ行くわよエロオコジョ!!」
「カモッス姐さん!?」
横島の言葉を納得しきれないままアスナはカモを連れてネギを追い掛けた。
それを見送った横島は小さくため息を吐き向き直る。
「メド、確かにおまえの気持ちもわからなくないがさっきのは言いすぎだぞ?」
「はっ!私はああいう奴が嫌いなんだ・・・・見ていて虫酸が走るんだよ。」
吐き捨てるように言うと飲みかけのコーヒーに口を付けて黙り込んでしまう。
その様子をタマモはため息を吐くと日向で眠りについた。
〜〜あとがき〜〜
サボ○ンダーが大好きな龍牙の想いです。
あの埴輪みたいな顔が好きなんです( ^▽^)
金もいいし、攻撃方法が反則な気がするけど・・・・
さて今回はハルナの活躍?とメド、明日菜の不仲さを書きたくなったのでやってみました。
この二人は性格からして反りが合わないな〜って思ったんですよね・・・・
ハルナはエヴァ編ではもう一度ぐらい活躍の場をつくろうかな〜って考えてます。
それではまた次回・・・・