バカブラックこと、綾瀬夕映です


寝不足のハルナがフラフラ歩いていたら時代遅れの人たちにぶつかったです


しかも往来でナイフなんて持ち出して、しまいには捨てゼリフを吐くという徹底よう・・・・


正直、「アホですか」と言ってやりたかったですが実際に間近で見せ付けられると人間言いたい事も言えなくなるものです


勉強になりました


とにかく助かった私たちは気絶したのどかを公園まで謎の変な人たちに運んでもらうことにしたです


決して私が運べないからではないです










ピエロが踊るは麻帆良の地 第6話「ピエロ、見られる」











横島に対する制裁を終えたメドーサはその光景を笑ってみていたハルナのもとに歩いてきた。

ちなみにタマモは公園でお留守番である。



「ほら、あんたもそれだけ笑ってるんなら立てるだろ?さっさと立ちな。」

「・・・・あれ、本当だぁ〜ラッキー。」



単純に嬉しそうに立ち上がるハルナ。

さすがにお姫様抱っこを公衆の前でやられるのはきつかったらしい。

メドーサはすでに横島を引きずりながら公園へ向かっている。

それをハルナは笑いながら見ていたがさっきまで腰が抜けていたのに、すっと立ち上がれた事に疑問を感じた。



(ん?あの人まさか・・・・そんなわけないか、そんな器用そうな人じゃないし。)



ハルナはふと思ったことを否定して、メドーサのあとをついていった。

前を見れば引きずられていたはずの横島が普通に歩いている。



「あの人って人間なのかな?」










「じゃあ、俺たちは用事があるからもう行くね。多分あいつらも懲りたろうからもうあんな目にあうことはないだろう。それじゃあ・・・・」



公園に着いた横島たちはもう一度怪我がないかを聞いて心底安心した表情をしてもう一度頭を撫で去っていった。

姿が見えなくなるまで見送っていたハルナはのどかの様子を見ていた夕映に向き直った。



「ねぇゆえ、あの人―――横島さんって言ったっけ、どう思う?」

「さぁ、どうといわれても、さっきハルナが言ったことが本当ならただのお人好しの変態としか言えないです。」

「でも、あの人が笑わしてくれたおかげでさっきまであった恐怖心がすっかり無くなってるのよねぇ〜あの人の言動・・・・な〜んか引っ掛かるのよね〜。」

「そうですか?私にはアホな人にしか見えないです。」



ベンチに座りながら夕映は無表情でピーマンコーラの続きを飲む。

その膝には涙を流したあとが残るのどかが眠っていた。










日も沈み辺りが暗くなった頃に自宅に帰ってきた横島たちはメドーサの淹れたコーヒーを飲みながら先ほどの話をしていた。

タマモは皿に入れたミルクであるが。



「ったく、あんなふざけたマネまでして恐怖心を解こうとするんじゃないよ。」

「は?何言ってんだ?」

「ハルナって呼ばれていた小娘のことだよ。あんたわざとやっただろ。」

「そんなわけないだろ。」



疑問ではなく確信。

バカが付くほどのお人好しで人の感情を読み取ることはずば抜けている。

あの表情の乏しいマリアの感情さえ読み取ることが出来るのだ。

しかしあの道楽公務員のように話すことで解決できるほど器用ではない。

だから体を張って助けるのだ。

もっともそれのほとんどは無自覚で、肝心の恋愛感情はまったく無頓着ではあるが。

とにかくそんなやつなのである。



「無駄よ。ヨコシマは無自覚でやってるんだから。」

「はぁ、あんたらしいけどね。」



タマモの答えにメドーサは呆れたように横島を見ていた。

その意味がわからない横島はしきりに首をかしげて悩んでいる。

とそこに仕事で使う携帯に一本の電話が入った。

それに出た横島は1分も話さずうちに電話を切った。



「なに、もう仕事かい?」

「ああ、学園の数箇所で大量の魔力を感知したそうだ。この時間帯なら一般生徒は帰宅しているが周囲に十分注意せよ、だとよ。」

「私は必要かい?」

「いや、大丈夫だよ。手札を見せるにはまだ早いさ。メドはおいしい夕食でも準備して待っててくれよ。事が終わったら学園長室に顔を出してから帰ってくるわ。それじゃ、行ってくる。」



そういうとピエロの面を被り真紅の外套を身に着けると『転』文珠を使い指定された地点から最も近い『移』文珠へと転移した。

それを見送ったメドーサは立ち上がりエプロンをつけてキッチンへと向かう。



「さぁ〜って夕食は何にしようかね。」

「油揚げ。」

「わかってるよ。でも今日は時間がないから安物だよ、我慢しな。」

「仕方ないわね・・・我慢してあげるわ。」

「食べさせてやってるってのに図々しいね、まったく。」



ぶつぶつ文句を言いながらメドーサは夕食の支度に取り掛かる。

その顔はどことなく嬉しそうであった。










文殊で転移した横島は指定された森の一角で敵と戦闘を開始していた。

学園長の話ではこの近くに召喚された悪魔は数にして50前後。

今の横島にとってはものの数ではない・・・・しかし。



「なにが50前後じゃーーー!!!100はいるぞーーー!!!ちゃんと仕事せんかーい!!」



実際に襲撃してきた悪魔の数は約100体。

明らかに情報伝達ミスである。

しかし実際はあの電話の後さらに召喚されているため学園長に非はない。

それを知る由もない横島は愚痴を言いながらも敵を戦滅していく。

右手には栄光の手、左にはサイキックソーサーといつもの構えから繰り出される縦横無尽の攻撃。

サイキックソーサーを飛ばし敵に当て爆発させる。

爆風で周囲の悪魔に一瞬の隙が生まれた。

その隙を逃さず、栄光の手を伸ばして数体まとめて倒す。

背後から襲い掛かってきたのには左手に展開した栄光の手で斬り伏せ、その場を離れる。

それと同時に十体の悪魔に囲まれてしまった。



『大層暴れてくれたがそれもここまでだ。死ねェェーー!!』



一斉にかかってくる敵を両腕に展開した栄光の手を使い躱しそして斬り伏せる。

しかし、今回喚ばれた中でも強力な悪魔数体には防がれてしまった。



『我々をそこらの奴らと一緒にしてもらっては困るな。』

「確かに他の連中とは違うようだな。だが、これならどうだ!?」



鍔迫り合いをしていた烏族と呼ばれる悪魔に右のハイキックを繰り出す。

それを左の腕で受けとめようとしたが、直観的に何かを感じ取った烏族は飛ぶようにその場を離れた。

しかし一瞬遅れたため、烏族がもつ大剣に足が当たる。

その瞬間、大剣が真っ二つに斬られた。

そう、折られたのではなく斬られたのだ。

驚く烏族を他所に横島は追撃をかけた。

左足にサイキックソーサーを展開して回し蹴の要領で飛ばしたのだ。

さすがの烏族もこれには反応できないと思われた。



『我を舐めるな!!』



しかし烏族は斬られた大剣と使い弾く。

剣を振るったその先には同じものがもう一つ。

それを反射的に避ける・・・・いや、避ける直前にそれは爆発した。



『グッ、小癪な!?我はこの程度では倒されんぞ!?』



その瞬間、烏族は袈裟懸けに真っ二つに斬られた。



『なっ!?馬鹿な・・・・。』



驚愕の顔を浮かべた烏族は何が起こったか理解できずに消えていった。

今の流れはこうである。

右足に展開した栄光の手で大剣を切断し、後ろにさがった烏族に左足からサイキックソーサーを放つ。

それに気を取られている隙に右足をサイキックソーサーに切り替えて放つ。

つまり三段蹴りの要領である。

右のソーサーを顔の近くで爆発させ視界を防いだ隙に近付き斬り伏せたという四段構えだったのだ。



「さあ、次はどいつだ?」



その言葉がきっかけとなり悪魔は一斉に襲い掛かってきた。

それをすり抜けるように交差するとその悪魔は血を噴出し倒れる。

それに見向きもせずに次の敵へと向かっていき次々へと敵を地に伏せてゆく。

数十分後には残りが50体ほどまで減っていた。



「さて、後一つだな。ん・・・・結界が一部破かれた?それにこの気配は・・・・ってちょっと待て、こっちに向かってくる!?」



横島は驚愕した。

文珠の結界が一部破壊されただけではなく、感じたことのある気配がまっすぐこちらに近づいて来るのだ。

駆けつけようにも敵に囲まれており行くこともできない。

この事態に慌てるもすぐに冷静さを取り戻し敵に向かう。



「チィッ!ここで慌てても仕方ない。早く片付けないと。」



横島はさらにギアを上げて倒しにかかった。

その素早さに翻弄され一体、また一体と倒してゆく。

しかし・・・・



「そこで、暴れてるの誰?・・・・へっ?」



声の方へと目をやるとその瞳を見開き目の前の事態を理解しようとしているハルナがいた。










「あぁ〜も〜何でこんな日に限って書庫整理の当番かな〜。」

「何言ってるですか。書庫整理の間ずっと寝てたじゃないですか。」

「あんなんじゃ寝たうちに入らないって。」

「ハ、ハルナ・・・・それ寝すぎだよ。」



ここにいるのは先程時代の波に乗り遅れた人たちに絡まれた三人である。

横島たちが去ったあと目が覚めたのどかと一緒に部活をするために図書館島へと行った。

最初は体調の悪かったのどかを心配して休もうかと考えたが運悪く書庫整理の当番が当たっていたため二人で行こうとしたがのどかが無理言ってついてきたのだ。



「あっ!!携帯忘れてきた・・・・先帰ってて、取りに行って来るわ。」

「だ、大丈夫なの?」

「大丈夫だって。二人は先に帰って休んどきなよ。あのどかは先に寝てていいからね。じゃ、また明日ね夕映。」



のどかたちの心配をよそにハルナは笑いながら図書館島へと引き返す。

書庫に着くと入り口の棚の上にぽつんと置かれていた携帯はすぐ見つかった。



「ん?これは・・・・」



ハルナは携帯の隣に置かれた本が目に入った。

それは額に傷のある少年が魔法学校に通う中、最強にして最凶の魔法使いと対決していくというベストセラー小説。

ちなみにのどかのお気に入りである。



「こんな世界が私たちの世界の裏にあるわけないわね・・・・まぁあったらあったでネタに困らないんだろうけど。」



そう一人小さく笑いながら、図書館島をあとにした。

日も沈みきったこの時間は出歩いている人は一人もおらず、街灯だけが自らを主張するかのように輝いている。

そのとき、視界の端で何かが光るのが見えた。

なんとなくそちらを向くと麻帆良の端にある大きな森。

目を凝らしてよく見ると再度何かが光ったように見えた。

不思議に思ったハルナは興味本位で森に向かっていく。

ハルナが目を凝らしたとき、その瞳が青く光ったことは誰も知ることはなかった。

森の入り口まで来たハルナは辺りを見回す。

別に変わった様子はなく静かな森だった。

しかし森の奥のほうを凝視するときらりと何かが光るのが見えた。

それに誘われるかのように森に入っていく。

数分歩くと見えない何かに頭をぶつけ尻餅をついてしまった。



「痛った〜〜〜。何よこれ?何でこんなところにガラスの壁があるのよ〜。」



お尻についた土をほろいながら立ち上がると爪先で軽く蹴るがビクともしない。

それに腹が立ったのか両手でその壁をおもいっきり押す。

すると、一瞬電気のようなものが走ると先程までの頑丈さが嘘のように体がすり抜けた。

虚を突かれたハルナは転びそうになるが何とか体勢を整えた。



「あ、あれ?」



突然の出来事に混乱するがそれだけでは終わらなかった。

先程まで静かだった森の奥から叫び声が聞こえたのだ。

それも一回ではない。

二回、三回と数は増えていきハルナはそのたびにビクッと体を震わせる。

それは恐怖からの怯えかそれともただ単に驚いているのか。

ハルナは声がするほうにゆっくりと、しかししっかりとした足取りで進んでゆく。

爆発音や叫び声は絶えず鳴り響いている。

それでも進むのは好奇心の賜物か。

一歩進むたびに叫び声は大きくなり爆発でおこる生暖かい風がハルナにぶつかる。

10分ほど歩くと開けた場所に出た。



「そこで、暴れてるの誰?・・・・え?」



視界が開けたとともに声を掛けるが事態を目の当たりにしたハルナは目を見開いた。

そこにいたのは鬼の顔や烏の顔をした化け物とピエロのお面をした人。

ハルナに気づいた化け物―――悪魔は今にも襲い掛かりそうな雰囲気でハルナを見ている。



「・・・・え?何これ?ば、化け物?」



現実ではありえない光景を目の当たりにしたハルナは誰に言うわけでもなくポツリと溢した。

しかしそれがいけなかた。

その言葉が合図となり数体の悪魔がハルナに霊波砲のようなものを口から発射する。

その一発一発にはさほど威力がこもっていなく、横島にしてみれば片手で防げるものだったのだが一般人のハルナにしてみれば凶器である。



「危ない!!」

「キャアァーーーーーーーー!!!!!」



ハルナは頭をしゃがみ込むのではなく、両手を前に翳すと眼をぎゅっとつぶって身構える。

なぜそうやったのかはハルナ自身わからなかった。

ただ本能的に手を出したのだ。

一方ピエロのお面の人―――横島は手に持っていた『護』が入った文珠をハルナに向かって飛ばす。

文珠も元を辿れば横島の霊力である。

ある程度本気を出せば自分の意思で手で投げるよりも速く飛ばすことも出来るし、威力を変えれば発動時間をも左右できる。

普段それをしないのは敵を欺くためである・・・・疲れるからやりたくないというのが大半を占めるが。

とにかく、今回ばかりは部が悪かった。

ハルナまでの距離がありすぎたのだ。

いくら文珠だからといってそれ単体で音の壁を越えるほどの速度は出せない。

そのことを横島は本能的に理解した。



(間に合わない!?チクショーどうする!?別な文珠で、いや間に合わない!封印解除は、やっぱりだめだ。どれも間に合いそうにない!また守れないのか!?また目の前の人を助けれないのか!?チクショーーーー!!!)



自分の力がまた及ばないことに行き場のない怒りをあらわにする横島。

しかしそのとき奇跡が起きる。

悪魔の初弾がハルナの手に当る瞬間、何かにぶつかった様に弾かれたのだ。

その一瞬の間に『護』の文珠が発動して、砲撃は完全に防ぐことが出来た。

しかし横島はそれど頃ではなかった。

仮面の中で眼を見開きハルナを見る。



「な、なぜ彼女があれを・・・・!?い、今はそれどころじゃない!!」



横島は今の疑問を頭の隅に追いやりハルナの前に立ちふさがり砲撃を次々と打ち落としていく。

一方ハルナは衝撃が最初の一発以外まったく襲ってこないことに恐る恐る眼を開いた。

そこには半透明の幕とハルナを庇うように立つ横島。



「え?これは・・・・」

「いいかい、そこを動いちゃだめだよ!!」



そういうと、横島は悪魔に向かって栄光の手を幾度となく振るった。

戦いに関しては素人のハルナにもわかるほどの凄さ。

型にはまった舞いのような美しさはないものの、戦いの中で洗礼された動き。

まさに踊っているかのようでハルナはその動きにただただ見惚れるだけであった。










「これでラストだっ!!」



あれから数十分、最後の敵を切り伏せた横島は息を切らすことなくその場に佇んでいた。

しかしすぐに、ハルナの結界を解除し、優しく頭を撫でた。



「さあ、もう大丈夫だよ。」

「・・・・え?」



次第にハルナも焦点があってきたのか横島の顔を見て聞き返す。



「安心していい、あいつらはいない。もう危険なことはないよ。」

「・・・・た、助かったの?」



ハルナの質問に優しく頷くと途端にその場に崩れ落ちた。



「だ、大丈夫かい!?どこか怪我でも!?」

「い、いやぁ〜ちょっと緊張の糸が切れたって言うかなんていうか。あはははは。」

「立てそうかい?」

「あはははは、無理っぽいです。」



横島はハルナに問いかけるが笑って返す。

しかし、語尾や体が震えているのを横島が気づかないはずもなく・・・・けれども何も言わずに優しく笑ってハルナの横に座った。

先ほどまでの喧騒が嘘のように静かな夜だった。

その中に唯一横島の小さな笑い声が響く。

ハルナはそれが癇に障ったのか声を荒げながら横島を見た。



「な、何笑ってるんですか!?」

「別にハルナちゃん事を笑ってるわけじゃないよ。たださっきと同じだと思ってさ。」

「え?」

「いや、さっきのやり取りが昼間と同じだと思ってね、それが面白くてさ。」

「さっきって・・・・もしかして横島さん!?」



驚いたハルナは指をさして叫んだ。

それに苦笑しながら横島は面を外した。



「ははは、驚いたかい?それにしても俺って自己紹介したっけ?」

「いや、一緒にいた人がそう呼んでたのを聞いたんですけど、違うの・・・・違うんですか?」

「そんな堅苦しくなくて普通に喋ってもかまわないよ。俺の名前は横島忠夫っていうんだ。今日からここで警備員をやってる。」

「わ、私は早乙女ハルナっていいます。き、今日から警備員ってもしかして・・・・」



ハルナはゆっくりと横を見る。

そこには苦笑いした表情の横島。



「そう、初仕事がハルナちゃんたちを不良から助けたことで2回目の仕事がこれ。」



それを聞いたハルナは冷や汗を掻きながら笑った。



「あ、あは、あははは〜〜。私って凄い運?」

「運で片付けられる問題じゃないと思うんだけどな・・・・まぁ、それは置いといて君に聞きたい事がある。」



笑っていた表情を消して先ほどまでの真剣な表情をしてハルナを見据えていた。



「なぜ君がサイキックソーサーを使えるんだい?」






〜〜あとがき〜〜
なぜハルナを霊能力者にしたのか・・・・単に龍牙が好きなだけですw
それ以外にもある能力が・・・・それはまた次回




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